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2006年4月21日 (金)

古に眠る炎竜#28(長編連載小説DB)

 一方のシリスは、まだあきらめきれず、それが唯一の頼みの綱のように、赤竜の顔を見上げる。
『封じられし古代魔法の噂くらいは、聞いたことがあるだろう。もっとも、それが役に立つとは限らぬし、それを一ヶ月以内に見つけ出して来るのは至難の業だろうが』
 ほかに方法はない。
 シリスが無言でフラドを背負うと、付き合いの短くないリンファは、それで彼の意志を見て取った。
 旅人たちが背中を向けると、赤竜もその意味に気がついたらしい。
『下らぬ人間の事情など知らぬが、こんなところまで来たのだ。土産にこれでも持って行け』
 金色の鱗を、人間のそばまで蹴り飛ばす。
 竜鱗の盾という、高価で強度の高い防具の元ともなる、貴重な物だ。
 リンファは赤竜から受け取ったそれを自分たちのため使うべきだと思ったが、シリスがフラドにあげようと言うと、強く反対はしなかった。その代わり、無償奉仕を望む吟遊詩人をよそに、村に戻って人々に成り行きを話し、依頼を受ける形をとったのである。
 村人たちは、長年祭ってきた主の正体に驚きながらも、真剣に旅人たちの話を聞き、頭を下げた。滅多に旅人の訪れないこの村にとっては、二人が頼みの綱だ。
 村人たちに見送られ、吟遊詩人と魔女は、古代文明の情報が集まる遺跡都市に向けて旅立つ――
 それが、五日ほど前のことだった。
「残るは、三週間とちょっと。これからもっと遠くに行く用事がなければ、充分間に合うと思うの」
 三つのうちの一つの試練を越え、次の試練の地として示されたエルカコムの大地を目の前に、リンファは同行者を鼓舞するように言った。その芸術的な造形を誇る顔には、未だ感情の色はないが。
 それでも、シリスは少し、勇気づけられたようだった。
「ああ。きっと間に合うよ」
 潮風が、ほほ笑む彼の長い髪をすくう。
 白い帆は見えない流れを受け止めて、高速船をエルカコム南端の港町ナブロに運んだ。
 空は晴れ渡り、太陽が強い日差しを照りつける。いくらか旅人の姿もあるが、港で働く多くの者は、赤黒い肌をした地元の者だ。皆、布を頭に巻きつけ、あるいはつばの広い帽子を被って、直射日光を避けていた。
「まず、帽子が必要かもしれないわね」
 布を頭から被ってフードのようにしてから、リンファが息を吐く。

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