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2006年4月17日 (月)

古に眠る炎竜#27(長編連載小説DB)

 火炎系の攻撃魔法では、炎の力が込められているであろう炎竜蓋とは相性が悪いかもしれない。そう思い、シリスもまた、緋の月の破壊の力を借りて得意の属性魔法を放った。
「〈ダウンバースト〉!」
 風系攻撃魔法でも最上位のものである。風が渦巻き、空高く昇った竜巻が、その風圧を岩肌に叩きつける。
 ドン、と、地面が大きく揺れた。しかし、炎竜蓋には、亀裂のひとつも入らない。
 揺れがおさまり、竜巻が消えると、シリスは目眩を感じて膝をつく。
「何だか、息苦しい……やるんじゃなかった……」
『無駄に空気を消費しただけだったようだな』
 あきれ声のまま、竜は旅人たちの無駄な行為をそう評価した。
 リンファは、まだあきらめきれないのか。ようやく立ち上がった吟遊詩人に、そっと歩み寄る。
「最後の手段を使えば、炎竜蓋も破壊できると思うの」
 彼女の提案にシリスは目を見開き、少し間を置いてから首を振った。
「威力が大き過ぎると、火山の活動に何か悪影響があるかもしれないし……結局、どこか、別なところに穴を開けるかも……」
「あれを使うのが怖いの?」
 氷のように済んだ目で見据えられて、シリスは、ぎくりと肩を震わせる。
「う……それは……」
 迷うように、さまよう視線。
 この旅人たちには、炎竜蓋を破壊するだけの力があるのか。
 赤竜は怪しむように顔を眼下に向けるが、その鋭い目に、相手を軽んじている色はない。彼には、少年を追いかけてきた二人の旅人から、秘めたる魔力を感じ取ることができるらしい。
 赤竜は小さく、それでも人間とは比べ物にならない豪快さで、ふん、と鼻を鳴らした。
『ただ破壊すればよいというものではない。先ほども言った通り、炎竜蓋は何十年もかけて造り上げる物だ。破壊した後、別の物を誘導に使うか……もしくは、上手く角度をつけて、蓋とともに山頂を崩すことだ』
 噴火による被害が、村と逆方向に流れなくてはいけない。赤竜には再び炎竜蓋を出すこともできないのだから、蓋を破壊した上で、村を守るための別の手立てを考えなくてはいけないのだ。
 旅人たちにも、赤竜の投げやりな態度の理由が納得できた。
「炎竜蓋を破壊し、上手く利用できるような、都合のいい魔法……そんなもの、あるのかしら?」
 ほっとしたような吟遊詩人の顔を横目に、リンファは半ばあきらめたような口調で言い、肩をすくめた。

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