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2006年4月13日 (木)

古に眠る炎竜#26(長編連載小説DB)

「あなたがやらなくても、わたしたちが同じ方法を使えるかもしれないわ。それくらい、教えてくれてもいいんじゃない?」
『無駄なことだ……』
 竜は、面倒臭そうに首を振る。
『お前たちの足もとを見てみろ』
 意外な指示に少し驚きながら、シリスとリンファは、自分たちが立つ岩の地面を見下ろす。
 円形に近い火口を、同じく円形の岩が塞いでいた。その端は滑らかで、あきらかに、自然のものとは思われないものだった。
 よく観察してみると、蓋となっている岩自体、山を構成する物とは異なっていることに気がつく。
『無理矢理噴火を阻害すれば、どこかでひずみが生まれる。そこで、普段はこれを、溶岩や噴出物を村とは逆方向に流すための誘導に使っていた。しかし、こうなっては仕方がない。最悪の場合、より村に近いところに新たな火口ができるだろう』
 火口を塞がれた火山の爆発力は、山の別の部分から流れ出すことになる。
 それは理解できたものの、シリスはまだ、なぜこうなったのか、納得はできなかった。
「しかしなぜ、火口を塞ぐことになったんですか? それが、禁を犯したときの罰?」
 彼の問いかけに、竜は、さも当然のことだというような声を出した。
『その人間が、火口に落ちそうになったからに決まっているだろう。愚か者が、考えなしにやって来るからだ』
 あきれ声に、シリスは少し驚いて、魔女と目を見合わせる。
「……この火口を塞いでる蓋を取り除けばいいんでしょう?」
 リンファが発した声には、赤竜と同じようなあきれの響きと、安堵に似た感情が混じっていた。
『わたしが数十年かけて造りあげた炎竜蓋だ。そう簡単には破壊できない。できると思うなら、試してみるがいい』
 投げやりな調子だが、決して、嘘を言っているとは思えなかった。
 それでも、リンファは呪文を唱え始める。
「〈プロミネンス〉」
 白い指先が地面を示す。オレンジ色に揺らめく炎が、灰色の岩に噴きつけた。
 熱に晒された岩肌が、かすかに波打ったように見えた。しかし、それは気のせいとも思える程度の現象だ。

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