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2006年4月12日 (水)

古に眠る炎竜#25(長編連載小説DB)

 赤竜はあきれたように、旅人たちを見下ろす。
『ふん……愚かな人間を連れ戻しに来たのか。しかし、もう遅い。禁は破られ、村には焼き尽くされる運命が下された』
 容赦のない、破滅の宣告。
 重々しい声で告げられた事実に、吟遊詩人が真っ向から鋭い視線を受け止めて口を開く。
「部外者のオレが言うことじゃないけど……何か、理由があったはずです。一人でここまでやってくるなんて、よほどの事情がなければできないはず」
 フラドはまだ、体格も大人になりきっておらず、それに見合う体力もついていない少年だ。旅慣れた二人にも楽とは思われない、それも、今まで登った者のいない道を一人登って来るのは、かなりの根気と勇気がいったに違いない。
 竜は、わずかに目を細める。
『とるに足らぬ人間たちの事情など、考慮するに値しない。その小僧、友だちのために我が鱗が欲しいなどと言っていたが……下らぬ話だ。そのために、村を消し去ることになるというに』
 竜の鱗の持つ意味を、旅人たちは知っていた。
 ドラゴンは、金銀財宝を護っている存在として伝承に登場することが多い。事実、魔物としてのドラゴンにも、輝く物を集める習性があるとされている。
 数少ない、知能ある竜にも、同じく黄金を好むとする言い伝えが多いが、実際には、違うのだ。その皮膚から抜け落ちた鱗が、魔力の光を帯びた黄金になるのである。
 赤竜の足もとにも、金色に輝く大きな鱗が何枚も折り重なっていた。
 リンファは少し、その輝きに心惹かれたようだが、さすがに竜の足もとに近づく気にはなれないらしかった。
「確かに……禁を犯したのは人間だけど……」
 子どものしたことだから、で済む話でも、相手でもないことはわかっていた。人との間で交わされた約束に従い長年村を護ってきた火山の主を相手に、戦いを挑むわけにもいかない。魔物の中の王者とも言える戦って勝てるとも限らない。
 シリスの赤い目が、赤竜の橙の目を見上げる。
 赤竜は顔を逸らし、谷間の村を見下ろした。
『あと、一ヶ月もつかどうかだ。村人たちに、生き延びたければ逃げろと伝えるがいい。ほかにできることはない』
「でも、今までは火山の噴火を何とか抑えられたんでしょう?」
 リンファが臆することなく、赤竜の前に進み出た。

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