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2006年1月28日 (土)

古に眠る炎竜#19

 いつの間にか、太陽は頂点を通り過ぎていた。
 カーマルクの食堂で遅い昼食を終えた旅人たちと考古学者たちは、早々に、町の端に向かった。いつもならもう少しことばを交わし、杯を交わすところだが、シリスとリンファは、談笑する時間すら惜しかった。
 脇に並ぶ家々が途切れる辺りで、地元の者たち、今日そこに加わった少年は足を止める。
 二人の旅人たちは、さらに少し進んだところで、振り向いた。
「博士、お世話になりました」
 吟遊詩人が、高名な考古学者にほほ笑みを向ける。
「なあに、我々は大したことはしておらんよ。試練を乗り越えたのは、お主ら自身の力だろう」
「わたしたちとしても、貴重なものが見れましたからね」
 博士のことばに、シェイドが続ける。
「シェイド、それにカナークとマユラも……おかげで、助かったよ」
「あんたちには、助太刀はいらなかったかもしれないけどな」
「いつでも力になるから、何かあったらまた寄ってよ」
 シリスが目を向けると、長身の剣士と女格闘家は、お互いを牽制するように肘を動かしながら答える。
「セレインも、博士の弟子になれてよかったね。頑張るんだよ」
「はい、頑張ります!」
 澄んだ赤の目を向けられて、少年は、元気よく声を張り上げる。最初の印象では、もっと大人しく気の弱そうな雰囲気があったものの、今は、自信と子どもらしい明るさに溢れていた。
「シリスさんが一緒に行ってくれたから、博士に会うことができたんです。お店でも、助けてもらったし……本当に、ありがとうございました」
「どういたしまして」
 ほほ笑み、吟遊詩人は手を伸ばす。
 セレインは少しの間戸惑ったあと、相手の手を握った。
 握手が終わると、そばから、どこかわざとらしい咳払いが聞こえてくる。
「わたしに言うことは何かないのか?」
 シェイドの肩の上に、知性を目に宿したフクロウが留まっていた。まるで興味がないかのように顔をそむけていたが、いつ声がかかるかと気にしていたらしい。
 シリスは慌てて、付け加える。
「ああ、ヘレスにも世話になったよ。あなたの知識は、カーマルクの考古学界にとって、重要になるだろうね」
「当たり前だ」
 胸を反らす聖獣に、シリスは苦笑し、見慣れた考古学者たちは、いつものこと、という様子で溜め息を洩らし、あるいは首を振る。
「とにかく……気をつけてな」
 気を取り直し、カナークが口を開く。
「詳しいことは知らないが、何か事情があるんだろう。でも、無理はするなよ。あんたらのほうに何かあったら、待ってる連中もいたたまれないだろうよ」
「大丈夫だよ」
「必ず、古代魔法は手に入れて見せるわ。それに、ちゃんとシリスには、博士との約束を守らせるから」
 シリスに続いて、長い間沈黙していたリンファがようやく口を開いた。
 彼女のことばに、吟遊詩人は少しぎょっとしたようだが、ほか一同の顔には、おもしろ半分、希望半分の笑みが浮かぶ。

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