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2006年1月21日 (土)

古に眠る炎竜#13

「これほど強い魔力なら、捜しやすいからな。まあ、皆無事で何より、といったところか」
 同じく魔力を感じ取ったらしいヘレスが、すでにすべて丸く収まったような口ぶりで言った。その存在を忘れかけていたシリスは、ぎょっとして段差から落ちかける。
 やがて、闇の中から、黒衣の魔術師と、白い姿の女魔術師が現われる。
「やあ、わたしたちが最後のようですね」
「みんな無事みたいね」
 仲間たちを見回してほっとした様子のシェイドと、その一方、全員そろっているのが当たり前のように言うリンファ。
 それでも、幻ではないことを確かめるように、段差の上の目に馴染んだ姿に歩み寄る。
 途端に、空気がざわめいた。まるで、瞬間移動させられたときのように。
「また、どこかに行くのか……?」
 剣の柄に手をかけながら、カナークは周囲を警戒する。
 リンファが、シリスの立つ円形の壇の上に乗った。すると、半ば予期していた動きが起こる。
 壇の上に、青い球体が浮かび上がった。球体の上には、地図に点在する陸地が浮かんでいる。草原や森は緑で、砂漠は黄土色で、雪原は白で縁取られ、山は球体の表面から、高さに合わせたように突き出ていた。
 まるで、小さな、セルティスト界〈フォース〉そのものだ。
「魔法でできた地図……かな」
 しばらく、茫然と球体を見つめていたマユラが、自信のない声でそう言った。
 もっとよく見ようと、考古学者たちは恐る恐る近づいていく。
 背後からの視線を感じながら、シリスはそっと、球体に向かって手を伸ばした。
『力を求める者よ』
 突然、重々しい声が響く。シリスは、思わず手を引いた。
「誰だ?」
 人間のものとは思えない、幾重にも声色が重なったような声に、デュメル博士が問いかける。
 それには答えず、感情の見えない声がことばを続ける。
『お前たちに、いくつかの試練を課すことになる。死の危険をも拭う勇気、自らを律する自制心、絶望に打ち勝つ希望を持つ者だけが力を手にできる。それでも力を欲するなら、立体世界に触れてみるがいい』
 立体世界――それが球体をさしていることは、あきらかだ。
 見守る考古学者たちやセレインらの間にも、緊張が走る。
 古代魔法の手がかりを求めてここまで来た旅人たちは、一瞬目を見合わせると、同時に球体に向けて手を伸ばす。
 指先にほのかな暖かさを感じた直後、二人は、世界が反転する感覚を覚えた。

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