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2006年1月20日 (金)

古に眠る炎竜#12

「魔物……か?」
 松明をヘレスに咥えさせて、カナークは剣を握りしめる。
 足を速め、剣士と、聖獣を肩にのせた吟遊詩人は、光を目指した。松明が必要なくなるほど明るくなると、火を消して、音も立てぬように出口に近寄る。
 円形の、天井も球面の内側のような部屋が、壁にかかったランプの明りに照らされていた。部屋の四方には、通路がのびている。その内側で、いくつかのシルエットが揺れた。
 身を低くして剣をかまえ、カナークは室内をうかがう。
 そこにあるけはいは、一……二……三人か。
 それは、どうやら人間のもののようだ。
 ふと、剣士の腕が引かれる。振り返ると、緊張感の抜けたシリスの代わりに、ヘレスが声を上げる。
「どうやら、ここで戦う必要はなさそうだぞ」
 近づいて来る足音に、カナークは思わず目をやった。その気配も、徐々に見えてくる姿も、よく馴染んだものだ。
「あら、無事だったみたいだね」
 赤毛の女が、健康的な日焼けした顔に笑みを広げた。
 彼女のことばを聞きつけて、別の姿も近づいて来る。現われたのは、白髪の老博士と、少年だ。
「マユラさん、それにデュメル博士とセレインも、ご無事で」
 槍を背中に留め、シリスがカナークに続いて通路を出た。
「そちらも、大丈夫そうだな。ただ、美人さんとシェイドは一緒じゃなかったのかの」
「ええ……」
 博士のことばに、少し心配そうな声を返して、吟遊詩人は部屋の中央に進んだ。
 瞬間移動させられた部屋と同じような段差の上に登り、彼は、四方にのびる通路を眺める。リンファたちが現われるなら、自分たちが来たのとは違う通路からに違いない。
「まあ、魔術師たちなら大丈夫だと思うけどな」
「少なくとも、あんたと二人きりよりはマシだろうしね」
 マユラのからかいに、カナークは肩をすくめる。
 目を閉じて気配を探っていたシリスは、周囲の会話も耳に入らず、覚えのある気配が少しずつ強くなってくるのを感じていた。距離を狭めてくると、それが存在する方向も、確かにわかるようになる。
 やがて、彼は、通路の一つに目を向けた。

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