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2006年1月19日 (木)

古に眠る炎竜#11

 淡々と、松明を掲げながら、カナークは歩き続けた。ヘレスがシリスの肩に留まって話し続けているので、いちいち後ろを確認する必要もなかった。
「ところで、何のために古代魔法など探しているのだ?」
 遺跡に関する推理を延々と述べていたヘレスが、話題を、もっと身近なものに移す。
「ああ……どうしても、強力な破壊力が必要で……」
 ヘレスの独り言にも律儀に付き合っていた吟遊詩人が、少し歯切れの悪い調子で応じる。カナークが振り向くと、シリスは思いつめたような顔でうなだれていた。
「力を追い求めるタイプには見えないな。その破壊力、誰のために使うつもりだ?」
「私利私欲のためじゃないよ。それは約束できる……人を助けるために使うんだ」
 真っ直ぐ剣士の視線を受け止めて、彼は答えた。
 カナークのほうは、べつに、疑っていたわけではない。ヘレスのほうも、軽い気持ちで聞いただけのことだろう。
 しかし、シリスの赤い瞳の奥に揺れる光は重い。
「なんだか、深い事情があるみたいだな。でも、余り思いつめないほうがいいと思うぜ。他人のためなんだろ、精一杯やるだけでみんな納得するさ」
「時間がないんだ……一ヶ月以内には、古代魔法を持ち帰らないと」
 この遺跡に存在するのは、古代魔法への手がかりだけだと云われている。順調に手がかりを手に入れたとしても、古代魔法が封じられた場所によっては、一ヶ月で持ち帰ることは難しい。
 シリスにとっては、わずかな時間でも惜しいだろう。
「でも……そのために、デュメル博士やきみたちを巻き込むことになって……」
「何言ってんだよ。オレたちにとってはこれも仕事のうちだ」
 カナークが、左手で吟遊詩人の背中をバン、と叩いた。シリスは転びかけ、肩に乗っていたヘレスは翼を広げてバランスをとる。
「ありがとう、カナーク」
 背中をさすりながらも、シリスは剣士を振り返り、笑顔で礼を言う。
 カナークは照れくさそうに顔をそむけると、今まで以上に大股で、先を急ぎ始める。慌ててあとを追いながら、シリスは、奇妙な感覚が空気を乱すのを感じた。
 右手に握った槍の感触を確かめ、通路の先に視線をやる。
 光が、小さな出口から、わずかに洩れ出ていた。その光が、時折何かに遮られたように、ちらちらとまたたく。

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