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2006年1月14日 (土)

古に眠る炎竜#07

 カナークとマユラが散開した。シリスは念のために防御の魔法を、リンファは敵を弾き返すための魔法を用意しようと、呪文を唱える。
「〈マナグラント〉!」
 シェイドは、カナークの剣に魔力を注ぎ込む。両刃の刀身は、神秘的に蒼白く輝いた。
「〈プロテクション〉!」
 シリスはセレインたちのために防御壁を張ると、槍を手に、走り出す。
 魔物たちは、目の前に駆け出して来た姿を、獲物と認識したようだった。
 足を止めると、ぎりぎりまで引きつけるように、シリスは待つ。
 彼の身体に、獣たちが思い切り体当たりを喰らわせる――その直前。
「〈エアボミング〉!」
 リンファが放った爆風が、シリスの目前に迫った獣たちに吹き付けた。先頭の獣はひっくり返り、残りの二匹も、足を取られてよろめく。
 左右から迫っていたカナークとマユラが、横から魔物を襲撃した。
「このっ!」
 マユラの棍が、一匹の額を打ち据える。獣は失神して、横に転がる。
 一方のカナークも、難なく獣を斬り伏せた。
 もう一匹はすでに倒れ、ピクリとも動かない。
「おーい、大丈夫か?」
 近くの遺跡から、探険家らしい青年たちが二人、駆けつけてくる。一人は、手に鎖を握っていた。
「なあに、大丈夫だよ。そっちも大変そうだのう」
「ええ、まったく」
 顔見知りなのか、デュメル博士が探険家の一人とことばを交わす。その間に、もう一人の探検家が手慣れた様子で、獣たちを拘束する。
「いつもすまないね。それじゃあ、気をつけてな」
 軽く手を振り、二人で獣たちを引きずって、近くの遺跡に向けて歩いていく。
 それを、少し茫然として見送っていたシリスは、ようやく我に返って槍を背負いなおしながら、考古学者たちを振り返った。
「こういうことは、珍しくないんですか?」
「まあな」
 刃を布で拭きながら、カナークが溜め息交じりに応じる。
「魔法文明時代の遺跡には魔物が潜んでることも多いし、魔法の罠が仕掛けられていることもある。探険隊が突然遠くの海に飛ばされたり、人形に変化させられて、解呪のできる魔術師を探し回るはめになったり……」
「かと言って、たまに出る超科学文明の遺跡じゃ、妙なカラクリや使い方もわからない機械で怪我をするはめになったりするもんね」
 マユラがことばを続けて、肩をすくめた。
 財宝を求めた冒険者が危険を覚悟で遺跡に入っていくように、町の近くの遺跡といえども、覚悟すべき危険度は変わらない。
「まあ、エルーダの遺跡は綺麗に掃除されているから、魔物の心配は少ないでしょう。ただ、これから資格のある者が訪れることで、何かが起こるかもしれませんが」
 再び遺跡へ歩き出しながら、シェイドが説明した。
 エルーダの遺跡は、森に少し分け入ったところにあった。
 周囲の木々が切り倒されたそこに、三角形の入り口が開いている。
「野獣でも迷い込んでないといいけどな」
 カンテラに火を入れて、カナークが先頭になって歩き始めた。

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