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2006年1月13日 (金)

古に眠る炎竜#06

 彼――声からして雄と思われる聖獣は、意味深長に、シリスとリンファを見る。
「それにしても、これは、変わったお客さまがいらしたものだ。一体、どういう遺跡に用がおありなのか?」
「強力な古代魔法が使えるようになりたいんだ。それも、できるだけ消耗が少なくて、攻撃範囲が指定しやすいような……」
「贅沢な用事だな。代償は大きいぞ」
 脅すようなことばに、シェイドが遮ろうと口を開きかけるが、シリスとヘレスの目が真剣そのものなのを見て、何も言わずに口をつぐむ。
「それは、覚悟の上だよ」
 吟遊詩人の赤い目に、決意の強い光が揺れた。
 その目に、聖獣も納得したらしい。彼は首をすくめ、目を閉じて、しばらく休眠することにしたようだ。
 研究所の者たちは、さらに準備を急ぐ。
「あの……」
 騒がしい中で、少年が、か細い声を上げた。
 触っても問題なさそうな物を整理していたシリスが、セレインの声を聞き咎めた。
「ああ、セレインは、博士に用事があるんだったよね」
 その声で、皆は、ようやく少年の存在を思い出す。
 皆に視線を向けられ、少し怯んだセレインを見て、資料の束を抱えたデュメル博士が目を見開く。
「その若さで考古学に興味を持つとは、なんとも感心な子だ。ぜひ、一緒に遺跡に行こうじゃないか」
「本当ですか……?」
 少年は、あどけない顔に喜びを爆発させる。
彼がもともと何の用事でここに来たのか、結局明かされることのないまま、彼らは遺跡に出発することになった。

 長身の剣士と、涼しげな格好をして太腿に三節棍をベルトで留めた女、肩にフクロウを乗せた特異な風貌の黒衣の魔術師に、やはり目立つ吟遊詩人と絶世の美女、そして子どもと老人――その一団は、非常に目立つ存在だった。
 門も何もない、ただ家が途切れているだけという街の端を出ようというとき、彼らの周囲が、途端に騒がしくなる。
「なんだ……?」
 シリスがつぶやいて見上げ、土埃が口に入って咳き込んだ。彼の代わりに、リンファが周囲に鋭い目を走らせる。
 行く手には、発掘中のもの、すでに全体をのぞいているもの――いくつもの遺跡が並んでいた。その奥には、鬱蒼と茂る森が見える。
 遺跡の間に、土煙が舞っていた。それは急速に、大きさを増していく。
「魔物だ、遺跡から魔物が出てきたぞ!」
 近くの遺跡を掘り起こしていた研究者か、それとも探検家か。どこかから、そんな声が上がる。
「遺跡から魔物……?」
 警戒し、慌てて武器を手にする旅人たちとは違い、研究所の者たちは、あきれた様子で肩をすくめる。
「またか……」
 どうやら、魔物の巣となっていることの多い遺跡に関わる者たちにとっては、こういったことは日常茶飯事らしい。
「ま、これも仕事のうちさね」
 マユラは三節棍を手に、迫り来る魔物を迎え撃つ。
 土煙のなかから、三つの姿が現われる。三日月形の二本の角を持つ、牛に似た獣だった。獰猛な目は赤く輝き、茶色のたてがみが風になびく。
「バイソンか……猪突猛進な連中だ。横からの攻撃には弱い」
 ヘレスが冷静に、視界の中で大きくなっていく姿について解説する。

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