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2005年12月30日 (金)

古に眠る炎竜#04

 カーマルクの中心部にある研究所に、シェイドとカナーク、マユラが旅人たちと少年を案内する。歩きながら、吟遊詩人はシリス、美女はリンファ、少年はセレインと名のった。
 木造の、一見寂れた屋敷が、三大考古学者の一人、デュメル博士の研究所だ。住み込みで働いている研究員は十人足らずで、皆、博士の弟子になることを望んでやって来た者たちである。
「ランガのヤツは、ちょっと頭が堅いんでな」
 無言で通り過ぎるのを見送る受付の若い男を振り返り、カナークが少年に、冗談めかして言う。
 左右にドアが並ぶ廊下は、真っ直ぐ続いていた。その先に、木製の、他のものと何ら変わりないドアがしつらえられている。
「博士、入りますよ」
 トントン、とノックして、シェイドがドアの取っ手を回す。
「おお」
 陽気な声で応じた人物の姿が、すぐに訪問者たちの視界に入った。
 資料や、出土品らしき何かの欠片が散乱する机の前で、白髪の老人が椅子に腰かけていた。人当たりの良さそうな老博士は、部屋に入って来た顔ぶれを見て、目を丸くする。
 彼がおもむろに立ち上がり、駆け寄って手を取ったのは、絶世の美女――ではなく、吟遊詩人だった。
「いやあ、その髪、その目……今まで見たことがない組み合わせだな。どこの出身だい? それとも、古代種の末裔とか、密かに某国に創り出された超人類とか、人に身をやつした竜王の末裔とか?」
「そ、そんなことはありません」
 怯んだように首を振るシリスの手を、デュメル博士は感極まったように振る。
「そうかね? 是非、研究してみたいものだが」
「博士……わたしたちは、ある遺跡について調べに来たのです」
 博士の手から逃げて背後に隠れるシリスを一瞥して、リンファが口を開いた。博士は少し残念そうに、椅子に戻る。
「ふむ。話してみなさい」
 周囲から椅子を発掘し、客人に勧めてから、博士は耳を傾けた。
 改めて自己紹介をしてから、リンファが、彼女らの目的を話し始める。
 多くの人々が知っているように、魔法は、保護と再生を司る蒼の月や、破壊と革新の緋の月の波動を導いて使うものである。
 しかし、古き超魔法文明時代には、月の力を使わない魔法も存在すると言われている。そして、そういった魔法は多大な魔力を必要とする反面、どれも強力なものだ、と。
 古代魔法が封じられた祠への道が記された遺跡があると聞き、旅人たちはここまでやって来たのだという。
「その遺跡に記されていた場所が知りたいの。情報料が必要なら、払うわ」
 リンファのことばに、博士は、シェイドと視線を交わした。
「確かに、エルーダの遺跡には古代魔法について記されておったが……あれは、古代魔法の使い手としての資格がある者が直接出向かねばならんようだぞ」
「魔力が高い者なら、動かせるかもしれません。……お二人なら、資格を有しているかもしれませんね」
 シリスとリンファの魔力を感じ取って、シェイドがそう請合う。

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